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メジャーの投球術 (祥伝社新書 106) (祥伝社新書 106)
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一球の背後に溢れる心理学的要素
(2008-09-15)
野球を対象としながら、選手がグランド上で見せる様々な場面の一つひとつを丁寧に分析する労作。その際用いられるのが心理学や運動生理学的手法である。
これによって、例えば「どうして外野手は打球が飛んだ瞬間に落下点を予測できるのか」「どうして投手はダーツの真ん中に矢を当てるよりも高い精度で球を投げることができるのか」といった問いに答えを出している。
確かに、スポーツ選手の成功は、豊かな体格や恵まれた運動神経、あるいは不断の努力によってもたらされるかもしれない。しかし、そうした成功の裏にはどの選手にも共通する構造があるのではないか。そのような視点で描かれる本書は、野球が、単なる「投げた、打った」の活劇ではなく、最新鋭のコンピューターでさえ再現できないような、身体の緻密な作業によって支えられているきわめて高度な営みであることを明らかにする。
本書の原題は"The Psychology of Baseball"である。『一球の心理学』という邦題から「一球の駆け引きとそれにまつわる人間の心理の機微を教える本」と理解する向きもあろうが、むしろそうした一球の駆け引きよりも、一球の背後にどれだけ心理学的要素が満ち溢れているかを教えるのが、本書の最大の魅力であろう。
野球の実践にも観戦にも、一読に値する一冊である。
野球と心理学の本格的な融合
(2008-08-10)
サッカーやラグビー、バスケットなどと違い、野球は止まっている時間が長いスポーツである。そのため他のスポーツと比べて、心理的要素が占める割合が高い。特に一打逆転のチャンス(=投手から見ればピンチ)などでは、配球を読んだり迷ったりする“間”がある分だけ、心の持ち方一つで勝負の明暗がくっきりと分かれてしまう。そういう観点で言えば、野球はもっと心理学的知見が活かされてもいい分野であり、高度な学問的資産を取り入れることで、プレーヤー及び指導者全体のレベルアップに大きく寄与するのではないだろうか。
米国の心理学准教授が著し、元日本人メジャーリーガーが訳した本書は、本格的な心理学と野球の融合という意味では嚆矢と言える一冊。米国ではこうした本は何冊もあるようだが、これを機に日本でも、例えば古田敦也と大学研究室とのコラボレーションによる「野球心理学」の本等が刊行されたらうれしい。


