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カスタマーレビュー ![]()
一つの時代の終わりと、これから始まる富の破壊
(2008-06-08)
今年読んだなかで最高の本だと思う。
先月5月出たばかりの本をこのタイミングで読了できたことは嬉しい。
内容は前半と後半に分かれ、
前半は彼持論のReflexivityの展開で、
人によっては退屈に感じられるかもしれない。
後半は戦後から今年3月に掛けての世界の金融界の軌跡で、
彼の実体験に裏付けられた話は躍動的だ。
ここにきて初めてReflexivityの重要性がわかる。
NewYorkTimesの書評で、一つの時代の終わりとこれから始まる富の破壊、
と紹介されていた。この二つの謎が本書を読み進む中で解明される。
また、言葉にはしていないが、彼はデカップリングを支持していることが明確に読み取れる。
身銭を切って投資するなら、インド(中国よりも長期的に有望)、
中国(但し2012年位まで、資産バブル崩壊のタイミングを掴む必要あり)、
中東、ブラジル、豪州(後の3つは資源ブーム)。
アメリカと欧州は富の破壊の格好のターゲットになるというのが、
私の解釈を交えて単純化した結論だ。
マルクス主義と市場原理主義の同根
(2008-05-16)
なんとも不思議な作品です。ルポルタージュでもなければ、理論書でもないし、といって詳細な回顧録でもない。ましてや投資指南書でもない。一言で言うと、ソロスの全体像が不思議な融合を示した作品です。今回の危機を目にしたソロス自身、コメントせずにはいられなかったのでしょう。しかし本書は今回の危機の具体的な解明自体を直接の対象とはしていません。今回の危機の特徴と全体的な位置づけについては、morrisのmeltdownをソロス自身がこの作品の中で薦めているくらいですから。ここでは、ソロスらしく、reflexivityという概念枠組みが提示され、それにより現在の経済学そして市場原理主義の根本にある啓蒙主義人間観と世界観が完膚なきまでに否定されます。題材とされるのは、彼が参加してきた金融市場の過去の歴史です。そこから彼が導き出したのは「誤謬」とその連鎖という命題です。radical fallibilityというテーゼは魅力的です。「全員が無知で間違っており、本質的に人間はそうならざるを得ない存在だ」という世界認識です。この世界認識は説得力のあるものです。この認識にたどりついたものにとって、「金儲け」という行為そのものは、もはや本質的な意味はありません。むしろその行為に狂奔する人々、そしてその行為の正当性を「アカデミック」に弁護する人々の「思考装置」の理解こそが、主要な関心となってきます。そして出てくるのが、ソロス独特の「哲学」への傾斜です。demons of our own design, black swanなどの著者は、皆、金融市場という市場原理主義の世界の中での「成功者」たちですが、皆そのキャリアの終わりには、ソロスと同じように市場原理主義のイデオロギー性と虚妄さとその非現実性を指摘するようになったというのは、意味深な現象です。これこそが20世紀後半の危険な知的遊戯だったのでしょう。いまどき「金融立国」なんていう時代遅れの遊戯に国の知性を動員して取り組もうとしている日本は「愚者の楽園」です。


